私たちの本社がある宮城県石巻市の周辺には、天然スレート葺きの建物があります。
天然スレートは、粘板岩を薄く板状に加工したものです。
粘板岩は硬くて耐久性があり、耐火性や防水性に優れた性質をもつため、屋根材に適しているのです。
ヨーロッパでは、イギリスやフランス、ドイツなどで古くから天然スレート葺きの建物が建築されてきました。。
今も、世界遺産として有名なフランスのモン・サン=ミシェル修道院や、イギリスのケンジントン宮殿をはじめとする数多くの城などで目にすることができます。
日本では東北の三陸沿岸地域を中心に産出し、現在の宮城県石巻市雄勝町や登米市が産地として知られてきました。
なかでも雄勝の雄勝石の歴史は、室町時代にさかのぼります。
玄晶石とも呼ばれ、硯(すずり)などの材料として珍重されてきました。
明治時代になると、日本でも西洋の技術を取り入れた天然スレート葺きの建物が建てられるようになります。
東京駅丸の内駅舎や北海道庁旧本庁舎をはじめ、明治・大正期の歴史的な西洋建築が今も各地に残っています。
私たちは、ヨシと並ぶふるさとの素材・スレートの屋根葺きにも取り組んでいます。
例えば岩手県盛岡市の岩手銀行旧本店本館は、岩手銀行赤レンガ館として公開されており、盛岡の観光のシンボル的存在です。
東京駅丸の内駅舎の保存復原工事中には、東日本大震災の巨大津波によってスレートが流される被害を受けました。
私たちが手を尽くし、一枚一枚回収したスレートは、「復興のシンボル」として駅舎に使用されています。
天然スレートの屋根材が用いられてきたのは、西洋建築の文化財ばかりではありません。
私たちの暮らす三陸沿岸地域では、神社仏閣や民家、作業小屋など和風建築にも広く利用されてきました。
私たちはこうした伝統を、現代の建築に生かす工夫も試みています。
震災後、工学院大学建築学部や株式会社LIXIL、
株式会社MonotaROの支援により建築された地元漁業者のための木造の復興住宅は、天然スレートで屋根を葺きました。
私たちの釜谷崎倉庫の屋根や、新事務所の壁面などにも天然スレートを採用しています。
私たちは、茅葺きだけでなくスレート葺きでも、伝統を生かしつつ、新たな提案を試みていきます。