工学院大学建築学部協力の下、東日本大震災で全壊した北上川河口に位置する白浜地区の漁業関係者のために
建てられた復興住宅は仮設住宅ではなく恒久住宅として、地元と大学そして地域生産者が協力し合い
資金等は多くの方々頂いた寄付等を元に着工することになりました。
棟数は木造建築11棟。施工は地元工務店や職人や大工が手掛けました。
震災直後、仮設住宅を建てることに国の政策が集中し、最初から恒久住宅を建てる発想はほとんどありませんでした。
仮設住宅は原則として2年で取り壊し、その後恒久住宅を建てなくてはなりません。
また仮設住宅の建設から取り壊しまでの費用は1世帯当たり約500万円。
最初から恒久住宅を作るのであれば、
国は仮設と恒久住宅と二度の支援をする必要も無く無駄が少なくなるということが事の始まりです。
今回は民間の資金で建設を行いましたが、予算に関しては政府や地方自治体が、
特に災害公営住宅の建設を行う際のモデルになることを意識して
工事予算を設定しました。
13坪の平屋が約900万円、19坪の2階屋が約1,100万円、30坪の共同利用の2階屋が約1,400万円。
総工事費は植栽、外溝工事を除いて1億7,000万円となりました。
また、建材は東北産の木材や国産の木材を使用し、工法においても伝統工法になるべく近い方法で地元の大工、
職人が揃っている
地元の工務店が建てました。つまり地元の木材を使う事で林業再生に貢献すると共に、
地元の職人の手で作ることで地元経済の活性化を同時に図ることになります。
自力で住宅を建てられない、あるいは建てない被災者の為に国の復興予算で今後、災害公営住宅が作られることになります。
災害公営住宅は大量に供給するためと全体的な公平性を意識するため鉄筋コンクリート造の味気ない、
東北の景色になじまない建物になってしまうことが懸念されます。
しかし、木造一戸建て住宅を希望する人は現在も多く、復興住宅の一部は、特に北上町のような漁業集落等の郊外の集落は
東北の美しい景色になじむ木造住宅がふさわしいと思うのです。
この白浜復興住宅には、主に地元の漁業関係者が入居し、入居者は白浜地区で被災され漁業や養殖業などの地元での
生活再建の必要性が高い方、老人世帯で生活再建が困難な方から優先的に居住していただいてます。
建物の完成はここで終わりではなく、始まりです。
依然あった状態に戻すよりも、より良いものにしていくポジティブな復興を目指しています。
日本の伝統的な木造住宅による美しい村づくりを目指す復興は国内だけではなく、
海外に向っても東北の復興を示すものだと認識しています。
この白浜復興住宅が、東北復興のモデルとしてさらに、今後の災害対策の参考になれば幸いです。